新たな産廃処分場の建設回避を

 はじめに

 西尾市一色町生田地区には、過去に民間の事業者が産業廃棄物処分場(産廃処分場)を設置し、廃棄物の埋め立てを行った後、排水処理を行わずに放置した産廃処分場の跡地があります。その跡地を取り囲む区域で、三重県の事業者が新たな産廃処分場の建設を計画しています。

 この計画に対して市では、平成29年8月に新たな産廃処分場建設地としての適否を検討するため、環境影響評価や地盤工学、経済学等を専門とする大学教授などで構成した産廃処理施設建設計画影響調査研究会(影響調査研究会)を設置しました。影響調査研究会では、5回の研究会を経て、平成30年3月29日に研究結果の報告を市長へ提出しました。

 

 市長への報告

 平成30年3月29日に、影響調査研究会の会長と副会長が「西尾市産業廃棄物処理施設の建設による周辺環境等への影響に関する研究結果報告書(報告書)」を市長に手渡しました。報告書では「一色町生田竹生新田地内における産廃処分場の建設は多方面にわたって悪影響を及ぼすことが明白になった。現世代のみならず、次世代の西尾市民、また愛知県民にとって不利益をもたらす今回の産廃処分場の建設は回避されることが望ましい」と結論付けられています。

 報告を受けた中村市長は「南海トラフ地震に起因する影響をはじめ、貴重な野鳥の生息地や子どもたちの教育環境への影響があり、三河湾全体の問題であることが証明された。報告書を県に示し、影響が多方面に及ぶことを主張していく」と述べました。

 

  影響調査研究会委員(敬称略) 

役職 氏名 分野 所属(平成30年3月29日現在)
 会長  片山 幸士  環境影響評価  学校法人穂の香学園常務理事
 副会長  折出 健二  教育環境  人間環境大学看護学部特任教授
 委員  木曽 祥秋  環境技術  豊橋技術科学大学名誉教授

 委員

 鈴木 輝明  内湾環境  名城大学大学院総合学術研究科特任教授
 委員  髙橋 伸夫  野鳥環境  NPO法人愛知生物調査会理事長
 委員  中山 惠子  地域経済  中京大学経済学部教授
 委員  野田 利弘  防災技術地盤工学  減災連携研究センター教授

  

  委員の意見

 自然生態系の観点から
  • 一色町には、 多くの野鳥が生息し、国と県が指定する絶滅危惧種の野鳥が多く生息している。これは、一色干潟とその沿岸に葦原が広がり、汽水・淡水の水面や湿地が多く残るためと考えられる。
  • 計画地に産廃処分場が建設された場合、一色町に残された汽水・淡水の生息環境が消滅し、絶対危惧種をはじめとする多くの野鳥が生息地 を失う。
 三河湾の環境の観点から
  • 一色干潟域は、三河湾の中でも優良なアサリの漁場であり、良質なノリの養殖が行われている。計画地周辺では、地域ブランド「一色産うなぎ」の養殖が盛んに行われている。
  • 南海トラフ地震が起き、津波による堤防破壊や冠水が発生すれば、産廃に含まれる何らかの有害物質が 三河湾に流出することが予測される。
  • 有害物質が流出した場合、愛知県のみならず、全国の食卓に安心・安全な水産物を供給することが難しくなる。また、県全体の漁業従事者の生活が大きく損なわれる可能性がある。 
 汚染物質の観点から
  • 計画されている 産廃処分場の底部は遮水シートが施工されるが、遮水シートの破損は、地下水さらには海水の汚染につながる。この地域で南海トラフ地震が発生し、地盤が液状化した場合、遮水シートが大きく破損することが予測される。その場合、地下水や周辺海域が汚染されることが予測され、立地場所としての適正が疑われる。
  • 全国各地の産廃処分場周辺の地下水が環境基準を超えた例が報告されているが、継続調査以外の措置が取られていない。環境ホルモンとみなされるさまざまな化学物質が検出されているが、規制物質ではないため、通常は測定されず、放流先の海洋生物への影響を予測する方法がないのが現状である。
 教育環境の観点から
  • 計画地には 一色中学校が隣接し、一色東部小学校も近距離にあるため、教育環境への影響を詳細に調査する必要がある。
  • 産廃処分場が建設されると、悪臭や空気の汚れ、作業する重機の騒音問題が発生し、学校生活を送る児童と生徒への大きな影響が懸念される。産廃を運ぶダンプカーが一日に何百台も通行すれば、通学時の危険につながる可能性があり、適当とは言い難い。 
 経済の観点から
  • 特産物の生産量の減少やそれに伴う所得の減少、衛生・騒音などによる健康面・精神面での被害など、その影響は計り知れない。産廃処   分場による環境・風評被害が発生した場合、地域住民への経済的な悪影響が考えられる。
  • 産廃処分場が建設されても、雇用創出など経済的効果は希薄と思われる。
 防災・地盤の観点から
  • 南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は70~80%で、切迫性が強い。
  • 計画地は液状化リスクが極めて高い。海抜0メートル地帯であり、地震時には地盤がさらに沈下し、長期にわたり水がたまる可能性が高  い。
  • 地震による海岸堤防の破壊・沈下が予想されるため、堤防機能は期待できない。
  • 地域温暖化に伴い海面が上昇することが考えられ、台風や高潮による浸水の危険性がある。 

  

 検討協議の経過

協議年月日 名称 内容
H29年8月29日 第1回研究会

・産廃処分場建設計画の概要

・現地視察

・今後の研究会について

H29年10月25日 第2回研究会

・周辺環境への影響等に関する委員発表について

 「一色町に生息する野鳥」:髙橋伸夫 委員

 「三河湾への影響」:鈴木輝明 委員

H29年11月29日 第3回研究会

・講演

 「御嵩町産廃問題のあらまし」:元御嵩町長 柳川喜郎 氏

・周辺環境への影響等に関する委員発表について

 「産業廃棄物処分場の現状と課題」:木曽祥秋 委員

H30年1月15日 第4回研究会

 ・周辺環境への影響等に関する委員発表について

 「教育環境の観点からの考察」:折出健二 委員

 「経済学的見地からの提言」:中山惠子 委員

 「南海トラフ巨大地震発生時に予想される西三河地域沿岸の液状化被害について」:野田利弘 委員

H30年2月20日 会長・副会長協議  研究結果の取りまとめ
H30年3月15日 第5回研究会 研究結果の取りまとめについて
H30年3月29日 市長報告 研究結果を取りまとめた「西尾市産業廃棄物処理施設の建設による周辺環境等への影響に関する研究結果報告書」を市長へ提出

  

 ※会議資料、研究結果報告書についてはこちら www.city.nishio.aichi.jp/index.cfm/10,52556,37,639,html